グランマ・モーゼス展ー素敵な100年人生を観て

本日午後は、世田谷美術館に行きました。アメリカの国民的画家と言われる「グランマ・モーゼス展ー素敵な100年人生」を観てきました。

 

グランマ・モーゼスの何がスゴいのか?一言で言えば、彼女の生き様にあります。

 

グランマ・モーゼス、本名アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860ー1961)は、f:id:hamansama0088saver2005:20220115202005j:image70代まで無名な農婦でした。もちろん、正統な美術教育を受けていません。70代で本格的に絵を書き始めると、80歳の時にニューヨークで個展を開きました。人気画家になった後もアトリエを持たず、101歳で亡くなるまで自分の暮らしを守りました。

 

なるべく短めに人生を振り返りました。日曜画家にすぎない1人の農婦が、国民的画家となる。その人生が劇的であることは確かです。ただ、彼女がスゴかったのは、その生き方を変えなかったことでしょうかね。

 

その生き方を振り返るだけで、説明は充分だと思います。私には、絵画の何がスゴいかは説明できません。それでも、なぜ、彼女の絵画がアメリカ国民を魅了するのか、考えながら鑑賞しました。

 

比較対象として、フランスの「巨匠」アンリ・ルソーを念頭に置きました。彼は、今では「巨匠」と呼ばれますが、もともとは正規の美術教育を受けていない、日曜画家にすぎませんでした。彼はなぜか「真の巨匠」ピカソらに絶賛されて、名前が知られるようになりました。

 

アンリ・ルソーの絵画を一言で言うと、ヘタウマというか、明らかに違和感を感じます。個人的には、何がスゴいかは分かりません。同じ日曜画家に過ぎなかった、グランマを引き合いに出して考えてみました。

 

アンリ・ルソーの絵画と比べると、グランマの絵画はあまり違和感を感じません。細かく見ると、日曜画家だなと思うところもあります。でも、全体的に見ると、統一感が感じられるんですよね。そこが不思議なんですよね。

 

それは、グランマの記憶力が確かだったからなのかもしれません。アンリ・ルソーは好きなモチーフをとにかく盛り込んで、絵画を描いていたそうです。様々なモチーフが入り乱れていることが、アンリ・ルソーの不思議な魅力に繋がっているのかもしれません。

 

一方、グランマも、自らが好むモチーフを描き続けました。彼女が主に描いた農村の風景は、彼女の記憶から引き出されました。彼女も色んなモチーフを描いたかもしれません。それでも、記憶を繋ぎ合わせたというよりも、記憶の中で、1枚の絵として完成したのかもしれません。だから、全体的に統一感が感じられる、違和感のない絵画となっているのかもしれません。

 

以上は、私の想像にすぎません。いずれにせよ、失われつつあった、アメリカの農村風景を、違和感なく再現したことが、グランマの作品の魅力に繋がったのかもしれません。人生100年時代を生きる秘訣は、この不思議な人生を歩んだ1老農婦が教えてくれるのかもしれません。